ちばてつや 『蛍三七子』

  • 2010/07/08(木) 23:40:59





この間、片岡義男の小説を探しに実家に戻ったときにふと目に止まったのがこの文庫本だった。

ちばてつやはもともと大好きなマンガ家の一人だったのだが、この『蛍三七子』はまともに通して読んだ記憶が無かった。
いつかはちゃんと読んでみようと思っていたのだ。

本を開いて発行日を確認すると1977年2月となっている。
読んだのは多分高校の頃だったのだろうか。

繰り返しになるけども私はちばてつやが大好きだった。
『ハリスの風』『おれは鉄兵』『アリンコの歌』『のたり松太郎』・・・・・

読む者を飽きさせないストーリーテラーとしての手腕は本当に大したものだった。
また、そのストーリーにしてもどんなに主人公が大活躍しても弱者やはみ出し者への優しい視線を忘れることは無い。

そしてどの作品にも日常の何気ないひとコマの描写の中から漂ってくるなんともいえない情感が好きだった。

それは朝食を準備する母親の姿だったり、梅雨の晴れ間のことだったり、通学の途中のひとコマだったりする。

小説で言うところの行間を読ませてくれる数少ないマンガ家の一人だった。


というわけで読んだ記憶のないこの『蛍三七子』を読み返してみた。

『出版社紹介』
昔飲んだ芋焼酎の味と、美しい自然が忘れられず、日吉瀬の村にやってきた青年、浩。だが彼が見たのは大規模な製紙工場の建設で、蛍や蛙が生息する水辺が次々に埋め立てられようとしている村の姿だった。村に住む勝気な娘三七子は、かつて自分を助けて水死した兄の墓に集まる蛍を守るため、製紙会社の御曹司戸樫の嫌がらせにもめげず、残された水溜りで養殖を始める。
そんな一途な三七子と浩の間に恋が芽生える。



概略はなんとなく覚えていたが詳細はやっぱり覚えていなかった。

ちばてつやにしては珍しく社会派?のお話だ。
ましてや色恋を正面切って描かないちばてつやにしては三七子と浩のキス・シーンまであってビックリなのだ。

こんな話だったっけ?と・・・・・


蛍が飛び交う有名なラスト?はどこか記憶の片隅に残っていたようにやはり尻切れトンボ気味だった。
三七子の行動もやはり子供のやる無茶な行動にしか思えない。
どちらが『正』でどちらが『悪』なのか?


この力のある作家にしては本当に書きたかったものが力不足で書き足りていないようにみえる。

それとも『明日のジョー』が終わって何か新しいものをと逆に入れ込み過ぎたのだろうか。

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このマンガが描かれたのはもう40年近くも前のことだ。

今ではいろんなものが変ってしまった。

なんてことを思いながら行間から漂ってくる情感に浸っていると少しばかり胸が切なくなってしまうのだ。

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