川上健一 『翼はいつまでも』

  • 2008/06/12(木) 23:40:16

川上健一 『翼はいつまでも』




この小説は読んでからもう3年近く経ってしまった。
だけど、ずっと大事にしていたい一冊です。

川上健一さんのものは最初に『ビトウィン』というエッセイを読んで、彼の一家に幸福をもたらしてくれた?であろう、この『翼はいつまでも』に興味が沸いて手に取りました。

結果はというと。
小説の終盤は年甲斐もなくボロボロと目から汗を流しながら読むハメに。
まぁ、どれだけ涙腺が弱いんだということですけど。(苦笑)

物語は40年ほど前の東北を舞台に中学生の青春・初恋を描いたもの。
もう青春・初恋物語の王道とも言える内容でした。
そりゃいくらなんでも強引!とか、
ちょっとクサ過ぎっ!っていう
エピソードや展開がてんこ盛り。
でも、それが不思議と良いんです。
最近作の『渾身』もそうですが、氏のこれで良い、これが書きたいっていう気迫と潔さが伝わってきていっそ清々しい。

そしてそんな強引な展開も主人公達の想いが確かなものとして描かれていればこそのものでした。
確かにあの頃は、こんな風に思ったり感じてたよねって、まるで自分も中学の頃に戻ったような感覚になりました。
読んでいるうちに中学の頃に感じていた事や思い出が鮮やかに甦りました。

しかも驚くのは氏がこれを書いたのが、おそらく50歳に手が届こうかという時だということ。
よくこんな昔の想いを風化させずに瑞々しい物語に仕上げられるものだと、今の自分を鑑みて思ってしまいます。

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想いの残った同級会のエピローグ。
つかのまの交錯と決別。
ちょっと甘くほろ苦く。
良い終わり方でした。


私にも3年前のお正月に19歳以来のなんと20数年振りとなる同級会がありました。
当時好きだったあの娘は?
な〜んて、お決まりの様に少しドキドキ、ワクワクしながら会場に向かったもんです。(照れ)

ところが同級会はその娘に黙祷を捧げることから始まることになりました。
享年44歳。
人生の実りを迎えるにはまだまだこれからという時でしょう。
あまりにも早すぎます。

現実はそうそう甘いものではありませんね。
いつだって残るのは苦みばかりです。
だからこそ、かつての大切な想いを詰め込んだタイム・カプセルのようなこの小説に、こんなにも心を惹かれてしまうんでしょう。


去年の『渾身』も良かったけど、またこんな青春小説を読みたいですね。
川上さん、もう青春小説は卒業ですか?



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