こうの史代 『この世界の片隅で』

  • 2009/05/11(月) 11:59:00

2009.5.5




出版社 / 著者からの内容紹介
平成の名作・ロングセラー「夕凪の街 桜の国」の第2弾ともいうべき本作。戦中の広島県の軍都、呉を舞台にした家族ドラマ。主人公、すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。しかし、一日一日を確かに健気に生きていく…。



ささやかな日常を過ごせることの尊さと幸せ。


物語の中盤までは作者独特の柔らかい絵柄で、笑いとペーソスを滲ませて楽しませてくれる。
この何気ない幸せな日々がとても良い。
登場人物の全てがいとおしく思えてくる。

そして終盤以降は暴力(戦争)によってこのかけがいの無い日々と人たちがもろくも崩れ消え去っていく。
『夕凪の街 桜の国』と同様に直接的な描写は極力控えてあるんだけども,その痛みはとても切ない。
読んでいるのが本当につらくなってくる。


だから主人公の失った右手と、その失った右手をきっかけに仄かな希望の光と出会うことになるエンディングのエピソードには本当に救われる。
もちろん、この物語が終わっても『夕凪の街 桜の国』へと続く痛みを内包してはいるんだけども。。。

それでも傷ついた主人公の”あんた・・・よう広島で生きとってくれんさったね”という、同じく傷ついた幼い少女への柔らかい広島弁の一言がとても胸を打つ。


今は昔と比べて世の中がどれだけ良くなっているのかなんて、贅沢な話かもしれないけれど良く分からない。
昔と比べても結構ひどい世の中になっているようにも思う。

だけど生きていかなきゃね。

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『夕凪の街 桜の国』のときも思ったけれど今を生きる全ての人に読んで欲しいと願います。

こうの史代さん、素晴らしい作品をどうもありがとう。